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大塚家具は親子喧嘩で「古典的な経営戦略の失敗」に陥った

● 大塚家具は 親子喧嘩で墓穴を掘った

 家具専門店の大手、大塚家具の経営先行きに関する不安が高まっている。その背景には、親子喧嘩によって同社のイメージが悪化したこともあり、同社の業績が急速に悪化していることがある。

 業界に詳しいベテランアナリストは、「大塚家具は親子喧嘩で墓穴を掘ってしまった」と厳しい見方をしていた。

 親子喧嘩のイメージ悪化に加え、同社は多くの重要な従業員も失った。富裕層を常連に持つ従業員の中には、大塚勝久氏の創業した“匠大塚”に入社した者も多い。それは、大塚家具から匠大塚に重要顧客が流れたことを意味する。

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 大塚家具の経営の悪化は、古典的な経営戦略の失敗といえるだろう。同社の経営陣が、本来あるべき経営戦略を理解せず、従来のビジネスモデルの否定を重視した、とも言い換えられる。有効な戦略なき経営が進んだ結果、売り上げは減少し、同社は損失回避のために自主再建を断念せざるを得ない局面を迎えているようだ。

 8月に入って以降、大塚家具が資本増強のために他社との提携を検討しているなど、さまざまな報道が飛び交っている。7日に大塚家具は、2018年12月期の最終損益が34億円の赤字に落ち込む見通しであると発表した。いつ、同社の業績が上向くか、先行きはかなり見通しづらい状況にある。

● ブランドイメージを 毀損した大塚家具

 大塚家具といえば、きめ細やかな接客サービスを売りに、どちらかといえば高価格帯の家具を扱うとのイメージがあった。新宿や有明の大塚家具の店舗に行くと、専門知識を持った店員が丁寧に説明をしてくれた。それによって、消費者は、その家具を使ってどのような生活空間、ライフスタイルを手に入れることができるか、具体的なイメージを描くことができたはずだ。

 それが、同社の成長を支えた。顧客との関係性を強化し、家具への潜在的な需要を喚起することで、大塚家具は成長を遂げてきた。このビジネスモデルを確立したのが、前会長であった大塚勝久氏だ。同氏は、“ボリュームゾーン(商品の売れ行きが伸びやすい価格帯)”を避け、高価格・高付加価値のビジネスに焦点を絞った。

 ただ、2000年代に入り、大塚家具は環境の変化に適応できてこなかった。幹線道路沿いにはニトリの店舗が増えた。イケアもシンプルなデザインを売りに、多くの家具を扱っている。いずれも、価格帯は低い。品質も問題ない。そのため、必要な機能と品質の備わった低価格の家具を求める人が増えた。

 競争は激化し、大塚家具の業績は低迷してきた。

 その状況に危機感を募らせたのが、大塚家具の現社長である大塚久美子氏だ。2009年、久美子氏は大塚家具の社長に就任し、気軽に入れる店舗運営を進めた。その結果、一時的に業績は回復した。

 問題は、この取り組みを父・勝久氏が認めなかったことだ。同氏は、娘の取り組みを“創業者理念の否定”と捉えた。業績不振を理由に、勝久氏は娘を社長から解任し、経営トップに返り咲いた。

 これに娘は反発し、大塚家具の仁義なき親子喧嘩が勃発した。企業の経営は、株主、従業員、近隣の地域社会など、多様なステークホルダーに影響を与える。大塚家具は、ステークホルダーの満足感を高めるために経営戦略を進めるのではなく、経営を親子喧嘩の場にしてしまった。2015年に、久美子氏は大塚家具の社長に返り咲き、親子喧嘩に終止符を打った。

● 大塚家具の 古典的な戦略の失敗

 久美子社長の指揮の下、大塚家具は、親子喧嘩への“おわびセール”を行った。社長自ら店舗に立って接客を行うなど、大塚家具はイメージ改善への取り組みを進めた。当時、大塚家具の店舗を訪れた人の心理には「自らの発想にしがみつく父親を排除してまでも業績向上を目指す久美子社長を応援したい」という、ある種の同情もあっただろう。

 しかし、その効果は長続きしなかった。


 当初の期待とは反対に、久美子社長の戦略はことごとく裏目に出た。その理由は、現社長が、自社の強みを伸ばそうとしなかったからだ。むしろ、久美子社長は、父親への反発心から大塚家具の強みを弱めてしまった。

 これは、古典的な戦略の失敗だ。経営戦略の目的は、自社の強みや新しい要素を生かして、環境の変化に適応することにある。これは、経営戦略の古典的な理論である。

 大塚家具の強みとは、高価格帯の商品を、高所得者層を中心に販売することだった。それが、量販店との差別化につながる。ボリュームゾーンに目を向けなかったからこそ、同社は顧客との信頼関係を築き、強化できた。

 家具販売企業としての大塚家具の成長には、そのノウハウを生かすことが重要だ。従来にはない商品を取り扱ったり、海外の顧客向けのマーケティングを強化したりするなど、同社が新しい取り組みを進めることはできたはずだ。

 しかし、久美子社長は、従来とは逆に、イケアやニトリを念頭に、ボリュームゾーンでの勝負を重視した。高価格帯の商品を扱ってきた大塚家具と、ボリュームゾーンをターゲットにしてきたニトリなどの販売手法は異なる。その時点で競争上、大塚家具は不利だ。また、親子喧嘩のイメージが強かった分、従来とは真逆の路線を進む久美子社長の取り組みは、父親の否定という負のイメージを社内外に与えただろう。

 加えて、富裕層を中心に顧客との関係性を築いてきた社員が父・勝久氏につき、大塚家具を去った。それも、大塚家具の販売減少の一因だ。“番頭”ともいうべき財務担当役員も大塚家具を去った。これは、同社の資金繰りが想定以上に悪化している裏返しと解釈できる。

 販売と経営管理の両面で、大塚家具は急速に体力を失っている。

● リストラによる “本業”の弱体化

 最終損益が3期続けて赤字に落ち込む可能性が高まる中、大塚家具はリストラによって当面の収益をカバーしようとしている。


 主なリストラ策は、店舗の閉鎖や売り場面積の縮小だ。それに加えて、大塚家具は、貸会議室運営大手のTKPと資本業務提携を結んだ。この背景には、余剰となった店舗の売り場面積を貸会議室として運営し、支出を抑えようとする大塚家具の考えがあった。

 大塚家具は、家具を販売して成長してきた企業だ。その企業が、家具の売り場面積を縮小することは、顧客や投資家に、「大塚家具は家具販売ビジネスに背を向けている」との印象を与えるだろう。その上、貸会議室を運営するTKPのノウハウは、大塚家具の家具販売の強化に必要な要素とは異なる。

 大塚家具は、よくわからない企業になりつつある。

 具体的には、同社がどのような企業を目指しているのか、ステークホルダーは明確なイメージを抱きづらくなっている。少なくとも、家具の販売という大塚家具の本業がどうなるか、先行きは読みづらい。この状況の中で店舗閉鎖などが続くと、同業他社との競争に対応することは難しくなる恐れがある。戦略なきままにリストラを進めることは、大塚家具の本業の弱体化につながるだろう。

 企業が競争する相手は、社外(自社組織の外部)にある。その相手と競争するために、企業は、自社の内部にある資源を活用したり、既存の要素と新しい要素の結合(イノベーション)を進め、付加価値の獲得を目指さなければならない。これは、経営戦略の古典的かつ基本的な命題だ。

 大塚家具の現社長は、この発想を十分に理解する前に、大塚家具からの創業者イメージの払拭を優先してしまったといえる。

 大塚家具が、古典的な戦略の失敗から自力で立ち直ることは、口で言うほど容易なことではないだろう。投資ファンドや他の企業からの支援を取り付けなければ同社の経営再建が難しいといわれるのは、このためだ。大塚家具の親子喧嘩に端を発する経営悪化は、戦略の重要性を確認する、良いケーススタディーといえる。

 (法政大学大学院教授 真壁昭夫)


引用:大塚家具は親子喧嘩で「古典的な経営戦略の失敗」に陥った

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